グランツアスレチックスクラブ

スタートラインに立った者 皆勝者

2023年11月9日

 スポレク祭で走り終えた女子リレーチームが、一列に並んで背中のゼッケンを外し合っている。この写真が子どもたちの心の中を表しているようで、何度見ても胸が熱くなる。このほほえましい光景からは想像できないほど、朝からこの子たちの心は揺れ動いたことだろう。

 大会当日の朝、リレーのアンカーが来ていない。9月の全国大会に県代表として100mに出場したエースが不在!?「自分たちのリレーはどうなるのだろう」口には出さなかったけれど、そんな思いが巡っていたのではないだろうか。

 第一アップをしている途中で遅れてきたアンカーは、親指側を浮かせるようにかばいながらみんなのところに歩いてきた。

 走れるのか?

 前日の朝、「明日の大会に出場できないかもしれません。」と連絡があった。親指の付け根、母指球の辺りが痛くてまともに歩けないとのことだった。病院の診断は「骨に異常はない。打撲であろう。」とのことだった。打撲であれば数日あれば痛みはなくなるだろうが、大会は翌日。直前まで様子を見て決めるということにした。

 昼頃になると、痛みはあるが朝よりはましになってきた。本人はリレーだけは走りたい気持ちが強い。これまで、この4人で都合を合わせてバトン練習をしてきた。私は、回数を重ねるごとに子どもたちの絆が強くなっていったのを感じていた。

やはり選択肢は一つしかない。

 今まで練習してきたこの4人で行こう。「走り始めて痛くなったら途中で棄権してもいいから」と本人に告げ、どのような結果になってもスタートラインには立たせる決定をした。その少し後で、親御さんから「100mは欠場し、リレーだけは走らせます。」と連絡があった。14:00過ぎからアップをしてバトンを合わせたが、何とかいけそうな感じだった。しかし、スパイクを履くと幹部が痛むので、アップシューズで出ることにした。

 1走、2走、3走と他のチームとの差を広げながらアンカーにバトンが渡った時には、かなり差が開いていたように思う。通常であれば、その差を更に広げてゴールできる実力の持ち主だが、差をグングン詰められた。これほど100mが長いと感じたのは初めてだった。いつものようなパワフルな走りとは程遠く、当然のことながら思うように前に進まない感じだった。「バトンを受けた直後は何ともなかったけど、途中からかなり痛くなった。」と振り返る。それでも仲間のために必死で走る姿。県チャンピオンのプライドも、足の不安もすべて捨てて、仲間のためだけに必死にゴールを目指した。そして、遠くから見つめる3人のリレーメンバーたち。目標の優勝にはわずかに及ばず、悔しい気持ちがないと言えば噓になるかもしれないけれど、お互いを思う気持ちは更に強くなったことだろう。レースの後、「みんなの足を引っ張ってしまった。ごめんね。」と落ち込んでいたそうだが、その横には仲間たちがいて、足を引っ張ったという言葉を全否定した。「最後まで走ってくれたから2位になれた。」3人には感謝の気持ちしかなかった。

表彰式で親指の爪をこちらに向けてポーズをとる子どもたち。全員の爪にはザビエルのイラストが描かれていたとか(なぜザビエルなのかは不明だが)。「この子たちは、本当の仲間になれたのだなぁ。」そう思わせてくれた。

Glanz ACのモットーは、「応援される人になれ」

みんな、間違いなく応援される子どもたちだと思う。

スピードは時として美しい しかし 仲間のために耐えて走る姿は なお一層美しい!

そして それが分かり合える仲間は 何よりもすばらしい!